開示側に求められるコスト削減の努力:Spieker対Quest Cherokee社(2009年カンザス州)

石油の使用料支払いを巡って争われている訴訟。電子証拠開示(eDiscovery、Eディスカバリー)による過度の負担を申し立てた被告のクエスト・チェロキー社の主張は退けられ、開示命令を求める原告の2度目の申し立て(Motion to compel production)が認められた。被告がEディスカバリーコスト削減の十分な努力を怠ったという判断に基づく決定である。

最初の開示命令申請
原告・被告の両者は一部の電子データ開示に関しては合意に達したものの、Eメールの開示には被告が反対したため、原告は裁判所に開示命令の申請を行った。この申し立ては以下の理由により退けられた:

○被告の提出したEディスカバリーコストの見積もりが82,000ドル~375,000ドルと高額であった
○開示が必要な電子データの訴訟への関連性を原告が十分に立証できなかった
○被告がコンピュータシステムのアップグレード過渡期にあった

開示命令の再申請
原告からの開示命令再申請では電子データの訴訟への関連性が認められ、被告へデータ開示が命じられたが、電子データの関連性に加え開示命令決断のポイントとなったのが、被告が見積もったEディスカバリーコストである。

Eディスカバリーのコスト
被告のベンダーであるKroll Ontrackからは、対象Eメールの処理に約82,500ドル、データのTIFF化に38,000ドルが見積もられ、さらに被告によると、秘匿文書のレビューに弁護士費用250,000ドルが必要と予測された。

当初の命令申請段階でこの数字を受け取った裁判所は、被告が新しく導入したばかりのソフトウェアおよび社内人員を使ったインハウス保全作業、およびFRE(連邦証拠規則:Federal Rules of Evidence)502条*を利用した秘匿特権文書レビュー費用の削減を両者に命じていた。

被告は従業員にEディスカバリーの経験がないことや、通常業務時間外での作業が必要なことなどを理由に、インハウス処理は外部ベンダーを使用する場合よりも高コストになることを主張したが、従業員の経験不足を理由にディスカバリーを免除された例はこれまでになく、裁判所は被告の本主張を説得力に欠けるとして退けた。

FRE502条と秘匿特権文書レビュー費用
原告側は、FRE502条に基づき、秘匿特権の放棄は行わないという合意を行った上で、初めから全ての電子データをネイティブフォーマットで提出することにより秘匿文書レビューのコスト削減を行うこと(=秘匿文書のフィルタリングを省くことによるレビュー作業のコスト削減)を被告側に提案したが、これは裁判所に認められなかった。FRE502条では、秘匿特権文書の不慮の開示を防ぐための最大限の努力をした場合のみ、秘匿特権を維持できると定めているためである。

しかし同時に裁判所は、被告の主張する秘匿特権文書のレビュー費用250,000ドルは誇張であるとした。当初開示要請段階で見積もられたこの数字が再申請段階でも全く修正されていない点を指摘し、被告側がEディスカバリーコストによる過大な負担を主張することのみに終始し、コスト削減の努力を全く行っていないと批判した。

被告はまた、開示対象データへのアクセスには膨大な費用が掛かる、既に開示されている文書(紙・電子含む)と内容が重複する、および書面による質問(interrogatory)や証言録取(deposition)など他のディスカバリー手段の適用などを主張したが、同じく十分な根拠がないとして却下された。

以上から、被告のチェロキー社に文書の開示を求める原告スピーカー氏の申請(motion to compel)が認められ、該当文書の提出に関して両者の間で協議を進めることが命じられた。

*FRE502:弁護士・クライアント間の秘匿特権データを誤って開示してしまった場合、そのデータおよび同じ事柄に関する全てのデータについての秘匿特権を放棄したとみなされてしまう可能性があるが、本項はその放棄を一定の条件下で制限する。

Hugo Spieker, et al., v. Quest Cherokee, LLC (6:07-cv-01225):米国裁判所データベースより



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10. 2009

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