提出形式に関する事前協議の重要性2:Covad社対Revonet社(2008年ワシントンDC)
前回に引き続き、Covad社対Revonet社のケースを取り上げる。
<2009年~>
2008年12月に下された、被告Revonet社へのネイティブ形式でのEメール再提出命令(前回エントリー参照)に関し、原告Covad社は被告による当命令の不遵守を申し立てた。
原告が不服としたのは、今回新たにPST形式で出力された提出内容と、前回の紙媒体による提出内容に差異が見られた点である(具体的は明らかにされていないが、2回目のEメールの数が少ないと推測される)。これに対し被告は、前回使用した検索プラットフォームがHTML形式のみに対応していたため、今回はPST形式に対応した別のプラットフォームによる再検索*が必要となり、完全に同じ検索を行うことが出来なかったと反論。さらに被告は、2回の提出内容の差異比較を行うことは非常に困難であると主張した。
こうした両者の主張に対し裁判所は、二つの異なる形式を比較するのが困難であることを認めた上で、このような結果を招いたのは被告自身の責任であり、これにより原告が不利益を受けることがあってはならず、また前回既にネイティブ形式での再提出が命じられているため、被告には不足しているEメールを提出する義務があるとした。ただし、被告とそのベンダーが2つの形式に関してEメールを一通ずつ比較する効率的な方法が見つけられない場合は、この問題に関して再検討の余地があるとも述べた。
さらに今回の申し立てで被告は、同じく既に紙媒体で提出された2,832ページの文書についてもネイティブ形式での提出を求めた。原告によると、被告から提出された紙媒体の文書は1ページのデータが数枚の紙にまたがり印刷され、カラムやラベルなどで整理もされておらず使い物にならなかったため、電子形式での再提出を被告に求めた。しかし、被告は全データの再提出に異議を唱えデータの数を絞るよう依頼した。そこで原告は148の文書を再提出するよう求めたが、原告からは一つの提出もなかったため、今回2,832全ての提出を要請、これに対し被告は148のみ提出すると主張した。
FRCP34は、データを通常保存する形式または合理的に使用できる形式で提出することを義務付けているが、さらにFRCP Advisory Committeeや過去の判例はネイティブ形式のデータに検索性がある場合、それを損なうような形式への変換は不適切であるとの見解を示している。このことを踏まえ裁判所は、表形式のデータを数枚の紙に分けて印刷し、相手側にそれを張り合わせて処理することを求めるのは不合理であり、電子形式での提出の方が遥かに容易かつ合理的であるとした。
裁判所は、両者が本問題の解決に向け取り組んでいる最中であることから、148の文書の提出有無および残りの文書の提出意思、原告からの開示要求に対するこれまでの応対などを含む6つの質問を投げかけ、被告がそれらへの回答を提出するまでは今回の申し立てに対する判断は下さないと締め括った。
*被告のESI(Electronically Stored Information:電子文書)保全・処理を行ったMiles Computer Forensicsによると、被告から処理を依頼されたPSTファイル(x1)に対してキーワード検索が行われ、合致したEメールがPST形式で出力された。具体的には、マイクロソフト社Outlookのクイック検索機能が利用され、PSTファイルをOutlookでマウントした後、キーワード検索を行い合致したEメールを新たなPSTファイルとして出力するという方法*が取られた。なお、本作業にはGuidance Software社のEnCaseおよびAccess Data社のForensic Toolkit(FTK)が検討されたが、目的の形式での出力が出来ない点**や、時間的制約などから最終的にOutlookが選択された。Miles Computer Foresics社は、2回目の検索結果が初回と異なった理由は解明できないとしている。
*PSTからPSTへの移動に際してメタデータに変更が生じることはない
**EnCase ECC(Eディスカバリーモジュール)ではPST形式での出力が可能
Covad Communications Company v. Revonet Inc. (1:06-cv-01892):米国裁判所データベースより
