LegalTech NY 2010に出展しました
今年も雪の舞い散る中、2月1日から3日までニューヨークで開催されたリーガルテクノロジー最大のイベント、LegalTech NYに出展しました。昨年から続く不況の影響により参加人数の減少も予測されましたが、ふたを開けてみると予想を裏切る盛況ぶりでした。正式な参加人数はまだ発表されていないものの、展示企業は数十社増え、会場内を回った印象だけでも昨年以上の活気を感じることができました。セミナー・展示ともに充実した内容だったという声が目立ち、毎年参加しているという関係者からは、この10年あまりで最高の盛り上がりだったとの感想を聞くことができました。今回は、この熱いLegalTechで注目を集めた話題を幾つか紹介します。
ECA (Early Case Assessment)
ここ数年コスト削減の手段として注目を集めているECAは、今年もLegalTechの中心的な話題となっていました。ECA= Early Case Assessmentは、訴訟開始から2~3か月以内に情報を分析し、案件のコストやリスク・メリットを早期に評価するプロセスを指します。ECAにより、膨大な時間やコストを費やす前に、和解すべきか、裁判に進めるべきかといった判断を戦略的に下すことが可能です。一般的にレビュー前に行われ、収集したデータをキーワード検索やコンセプト検索などのフィルタリングにより関連データのみに絞り込み、そこから案件の規模や範囲、事実関係などを把握します。今回のLegalTechでは、従来のタイミング通り少なくとも保全・収集を待っての実施がベストという意見を耳にする一方、実施時期は早ければ早い方がよいという意見も見られました。後者の場合、不要なデータの保全・収集をできる限り避けるため、文書管理・訴訟ホールドの段階で、各ソースに存在するデータを検索して関連データを特定するという流れになり、文書管理や訴訟ホールドアプリケーションと一体化したツールを使用することができます。ただし、バックアップデータやハードディスクの削除領域などが検索できないといったデメリットもあります。実はECA自体は従来から行われてきたプロセスであり、そのためのソリューションも数年来市場に出回っています。しかし、今年は特に昨年からの不況によるコスト削減ニーズの高まりを受け、前後のプロセスとのシームレスな統合やユーザーフレンドリーなインターフェースを前面に押し出し、ECA機能の強化や追加を謳うメッセージが各社で目に付きました。Eディスカバリーのコスト削減には欠かせない存在となりつつあるECA機能の有無とその利便性などが、今後Eディスカバリーソリューション選択時の検討項目の一つとなりそうです。
クラウドサービス
近年の流行キーワードである「クラウドコンピューティング」はLegalTechでも多くの注目を集めていました。リーガルテクノロジーにおけるクラウドには主に二つの側面があります。一つはリーガルツールとしてのクラウドサービス利用、もう一つはクラウド上のデータを開示しなければならない場合の対応です。様々なリーガルテクノロジーツールのクラウドモデル提供が進んでいる動きには、企業や法律事務所が不況によりコスト削減を迫られている背景があります。ケースマネジメントから訴訟ホールドの作成・管理、プロセシングやレビューなど様々なツールをクラウドサービスとして利用することで、初期投資費用や維持費を削減するだけでなく、プライベートクラウドはEディスカバリープロセスのインハウス化にも有効です。ただし、クライアント情報を扱う弁護士事務所では特にアクセスやセキュリティの問題からクラウドサービス利用に踏み切れないケースもまだ多いようです。二番目のクラウド上データの保全・収集は、広義にSNSなども含めたクラウドサービスの普及を受けて持ち上がっている課題です。クラウド上のデータの保有者は誰か、サービス提供会社が倒産した場合データはどうなるのか、訴訟ホールドはどのように実施するのか、保存・破棄ポリシーは?といった懸念材料は多く、サービス契約時に、これらの綿密な確認が欠かせません。すでにソーシャルメディアやクラウド上のデータからの証拠収集の判例は出ていますが、今後の裁判所による解釈には一層の注目が必要です。
IMRM (Information Management Reference Model)
今やEディスカバリーの国際基準ともいえるEDRMを提唱したEDRMグループからは、新たなモデルとしてIMRM(Information Management Reference Model)が発表されました。EDRMの最初のステップであるデータ管理(Data Management)をEDRMの一部かつ別個のプロセスとして新たに定義したIMRMは、企業における文書サイクルを示すガイドラインです。IMRMのプロセス自体はすでに文書管理で実施されており特に目新しいものではありませんが、Eディスカバリーにおいてデータ管理を特に重視する昨年からの流れを汲み、改めてその重要性を周知することに意義があると言えます。また、様々な部署や組織が関わるEディスカバリーにおいて、部門間(IT、文書管理、法務・知財)だけでなく、企業と社外の専門家や法律事務所などを繋ぐ共通言語としての役割も期待できるでしょう。
次世代のリーガルサーチ
毎年LegalTechのメインスポンサーとして名を連ねるLexisNexisおよびWestlaw (Thomson Reuters)からはそれぞれ新しいリサーチソリューションの発表がありました。昨年のGoogle ScholarやBloomberg Lawの参戦を受け、リーガルリサーチ市場の競争は熾烈化の兆しが見られます。Thomson ReutersがMacbook Airを持ったデモスタッフを至る所に配備し、使いやすいユーザーインターフェースをアピールする一方、LexisNexisはMicrosoft Officeとの統合を発表し、検索だけでなく、業務効率の包括的な向上を目指す次世代ソリューションによる他製品との差別化を図っています。
最後に
大きな盛り上がりを見せたLegalTech NY2010でしたが、昨年のドイツ・フランスでのデータ保護に関する動きを受け注目を集めるEU、そしてアジアも含めたグローバルなEディスカバリーに対する関心の高まりも印象的でした。弊社ブースに足を止めて頂いた人の多さだけでなく、アジア言語に対応するサービスやツールの増加はこうした関心とニーズの高まりを象徴していると言えます。セミナーでも日本語Eディスカバリーの話題が取り上げられるなど、2010年もリーガルテクノロジーは益々グローバルなレベルでの発展を迎えそうです。またLegalTechは、企業・弁護士・専門家による連携が不可欠なEディスカバリーには貴重な情報交換の場でもありました。訴訟の中心地ニューヨークで最新の情報を入手することのできるLegalTechは、現在訴訟対応に取り組んでいる、またこれから着手しようとする日本企業にとっても大きな情報源となるのではないでしょうか。



